最終回の今回も不動産業者が注意すべき悪質なタギングについて解説していきたいと思います。

■Ｄは夫婦

【Ｄ】はダブルで夫婦だろうか。【ＤＲ９-１８】の家に白昼堂々侵入してみる。留守なのはわかっていたが、思った通り部屋にはおしどり夫婦の写真が飾ってある。やっぱ当たるもんやなぁ、簡単なもんや！

しかし、この暗号解読の過信がとんでもない災難を生んだ。雑居ビルの事務所。ドアの脇に【ＤＷ】とある。これはなんや？　夫婦がＷ＝ワーク(仕事)しているか？

とりあえず、ためしに真夜中にバールを使って入ってみた。設計事務所みたいやけど、夫婦でやっている感じやないぞ。低い唸り声。なんや？

【堺市東区日置荘北町　2SDKテラスハウス　室内新築物件のような賃貸物件】

「ガルルゥゥ、グワン！　ワン！」

飛びかかってくる大きな影。デカい！【Ｄ】はドッグやったんかい！　咽喉笛に喰らいついてこようとする番犬。そこにもう１匹の鳴き声。【Ｗ】はダブルのことかい！　もっとわかりやすくしてくれぇ！

足と手を咬まれ、オレは血だらけで何とかその部屋を逃げ出した。当たらへんがなぁ～！

だが、それでも懲りないのがオレ。何とか体の傷が癒えた1週間後、性懲りもなく次のターゲットへ。

次は古いマンション。据え付けられたポストに【ＹＩ×】の文字。なんやろう？　興味が湧いたオレは、真夜中に再び訪問。ドアの隣にある小窓。開いてへんか。ススッとスライドするガラス戸。中に入ってみる。暗いし、なんにもないし、誰か住んどるんかいな？

そう思っていると、電気がパッと点いた。ヤ、ヤバッ！

眼の前に、パンチパーマでブルゾンを着込んだガラの悪い男が１人。

「だ、誰や、おまえ！」

「い、いや、あの…」

「なんやおまえ、高橋んトコの奴か！　嗅ぎつけやがったな、ブッ殺したる！」

「なんやと、ここが嗅ぎつけられたやとぉ！」

奥から、２人の男たち。どう見積もってもそっちの筋。

「スンマセン！　誤解ですってぇ～！」

オレは命の危険を感じて猛ダッシュ。

逃げながら考える。Ｙ＝ヤクザが、Ｉ＝いっぱいだから、×＝入っちゃダメって意味やったんか？　どういう意味やねん！

あのオッサンらあそこでなにしてたんやろう？　“嗅ぎつけられた”って…？　結局どんな意味だったのか、わからぬまま、オレは命辛々逃げ切った。

■

現在、タギングはさらに乱雑なものが増えている傾向にあり、判別不可能なまでに崩されたアルファベットやスペル間違いなど明らかに判別不可能でメッセージ性のないものだらけだという。

暗号は一筋縄では解読は難しいので、あまりアテにはなりまへん。

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取材・文／高木良太（ライター）

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