リポート／杉田和海(仮名)　31歳

人材コンサルタント会社勤務

コロナ禍で完全失業率と求人倍率が下がっている。過去最悪の雇用情勢が見込まれる中、優秀な人材を確保するために積極的に求人を行う体力を温存している企業がある。

それは、現状不満の実力を持て余した人材を今のうちに獲得しておきたいからだ。

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財布の中に４～５千円入っていれば上出来…と自己満してしまう我々とは別次元で、年収数千万円のレベルで人材確保のせめぎ合いを繰り広げている商売が、ヘッドハンターという職業である。

今回、交渉や口説き落とし、時には肉体を使っての色仕掛けなど、その手にかかればヘッドハンティング成功率９０％と言われるプロの女ヘッドハンターとコンタクトを取ることができた。

「優秀な人材？　いえいえ、このご時勢では、どうしようもない人材をヘッドカッターする依頼のほうが増えているんですよ。」

彼女の名は、杉田和海(仮名)。ヘッドハンターの商社で勤務してもう３年になる。上司も太鼓判を押す、超ヤリ手ハンターだ。

優秀な人材の引き抜きや真逆であるダメ社員のリストラ工作などで荒稼ぎする彼女が出会った、おかしなターゲットや騒動、リストラ工作に逆上した男の反撃などヘッドハンティングで起こった出来事を今回は彼女に語ってもらおうと思う。

■優秀な人材を素早くかっさらう

私が、大阪に支店を持つヘッドハンティングを主に行う人材紹介会社『レイズコーポレーション(仮名)』に入社したのは、3年前の春。

外資系ということで、仕事のヤリガイがありそうだと自分の勤めていた大手人材派遣企業を辞めて、転職しました。

「今日から、リクルーティング部に配属になった杉田くんだ」

「よろしくお願いします」

私が配属になったのは、ヘッドハンティングの中枢部署。いわば、突撃部隊です。私たちの使命は、応援している企業の収益力を上げる、管理体制を立て直す、生産を倍増する、コストを半分にするなどの問題を「できる人材」確保で、解決してしまうというもの。

大不況の今のビジネスシーンにおいて「スピード」は最重要課題です。橋にも棒にもかからない新人を大量に採用し、何年もかけて徹底教育しているヒマはなく、素早く業績回復を目指さなくてはいけません。

しかし、今のこのタイミングは、有能な人材を獲得するチャンス。解体したリーマンブラザーズの前に、ヘッドハンターがハゲタカのように群がっていた光景も記憶に新しいところではないでしょうか？

それに、ヘッドハンターは”スカウト”の部分だけが仕事ではありません。依頼企業からの要求を一方的に承るだけの存在ではないために、取引のある企業の内情を詳しく知り、業績改善のためにはどのような人材が必要かを分析。

それから、スカウトと採用プランをつくり、プレゼンテーションを行います。時には、クライアント自身でさえ気づいてない問題点について提案することもあります。

≫≫続く

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取材・文／新島洋子（ライター）

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