最終回の今回もドヤ街が立ち並ぶというイメージが先行していた大阪西成区が一変。高層ビルが立ち並ぶ街になる……。

低所得者層や日雇い労働者の追い出しが叫ばれる中で、果たして西成区は不動産投資のキーポイントになるのか、を検証・解説していきたいと思います。

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■インバウンドの需要が壊滅的過ぎる

例えば、一番の地価を誇っていた大阪道頓堀の『づぼらや』が店を構えていた場所。ここは大阪一の地価を誇っていましたが、20％～30％の下落率を叩き出しています。これは地価崩壊と言ってもいいのではないでしょうか。

近隣にある飲食店の店長の話では、「海外からの観光客の姿がなくなって人通りは激減しました。インバウンドでの需要を見込むことができないので、この周辺エリアの地価が下落するのも仕方がないことです。いち早く、コロナワクチンが世界中に普及し、安心・安全な状態になって観光に出かけられる世の中になってくれるとありがたいですね」と話します。

■土地鑑定士の意見「予測はまったく立たない」

大阪の中心部に関する地価公示調査をした鑑定士は、大阪難波エリアの地価急落について「戎橋筋や心斎橋筋では60店舗、道頓堀では20店舗ほど路面店がガラ空きの状態で、新規店舗がなかなか借りにくい状況ですね」と答え、さらに空店舗が急増し、土地活用のニーズ低下している部分が地価の下落につながってしまっているとの認識を示したのです。

それを鑑みて、今後の地価上昇の見通しについては、「海外からのインバウンド観光客が復活して、国内旅行客がワクチン普及で回復をするか、少しこのあたりに不透明感があります。店舗の売り上げが好調に回復し、的確な家賃を取れる状況は見通せません。やはり回復基調への道は厳しく、本格的回復は予測できません」と答えました。

■一極集中を脱出する兆し

昨年、パソナグループは淡路島西岸に関連施設を開設しました。コロナ禍での生活様式の変化や働き方の見直しが広がり、地価にも影響が出ると見越したうえでの決断。

千葉木更津では、コロナウイルス感染症が拡大する中でも人口の流入が続きました。そのため、東京湾アクアラインのエリアは住宅地の地価が急上昇。パソナグループは、本社機能を兵庫県淡路島へ移転をすることを決意。急ピッチで移転をして、現在一部の社員を除く、社員は淡路島に移住してきました。

これで、淡路島の地価下げ止まりも期待でき、コロナ禍でのネット通販販路拡大により、東京以外の物流施設を建設する用地を捜している動きも活発になりました。ということは、東京一極集中という動きに反する人工流動になっているということです。

■西成区の開発はいったん白紙状態に

コロナウイルス感染症の拡大で世界経済は急速に縮小し、投資マネーというのは行き場を失いました。しかし、不動産市場が縮むという可能性は小さいと思います。2021年になってワクチン接種が開始。どうやってコロナ感染を抑制できるかということがこれからの地価動向のカギになります。

大阪では、大阪市北部や南部などの地価が緩やかに上がっています。この流れを考慮すると、中心部にある西成区の開発というのはいったんストップし、労働者や低所得者の追い出しは白紙になると考えられます。（完）

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文／丸野裕行（編集長）

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