とりあえず、グロリアを交通量の多い道路を少し入ったススキの群生する土手に置くと、金ヅチで後部ウィンドウを叩き割ってみる。悪くない割れ具合。乗り捨てられた車に見えないこともない。その上、ここらの治安はあまり良くない。

川に自転車が捨ててあったり、イタズラのタグなどが団地の壁一面に書かれていたり、低所得者層が住む典型の場所だ。

それからオレは息を殺し、ススキの影から監視し続けた。どうせ暇だし、時間ならたっぷりある。

【≪衝撃≫　浴槽から白蟻発生で土台・柱がスッカラカンに！】

腹を空かせ、闇に脅えながら、待つこと午前３時。寒い。タバコが足元で山のようになっている。張り込みを続けて18時間が経過していた。

夜気を切り裂く２本の光。そろそろと近づいてくる気配がある。土を踏む、数人の足音。軋むジャッキの音。どうやら、タイヤを外すらしい。

「おい、そっち、持ってくれ」

「なんや、おまえ、手際悪いやろ」

しばらく待って、オレは口にまで伸びるハナを垂らしながら走った。

「こぉうらぁ～！　ナニさらしとんじゃ～！」

「うわぁぁ～！」

「待て、待て、待たんかいぃぃ～！」

蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う３人組の１人を引っ捕まえて、引き摺りまわす。

「ワシの車どうしてくれるんじゃ～！」

「すいません！　すいません！」

「ゴオラァァァァ！　オドレ、ぼてくりまわしたるぅぅぅ～！」

我ながらちょっとキレすぎだが、本当に自分の車ならおそらくはこのぐらい取り乱すだろう。

「お父ちゃんとお母ちゃんのところ行こうやないか、オウ！　全員呼べ！」

２台に分乗し、３人のヤンキー小僧の家を一軒一軒訪ねる。

「おまえん所の息子がうちの大事な車をオシャカにしてくれたんじゃ！　どないするんや！」

「ひへぇぇぇぇ～！　すいません！」

「警察行くどぉぉぉ～！！」

「それだけは！　うちのバカ息子、勘弁してやってください！」

両親から被害届けを出さないのを条件に慰謝料として総額60万いただいた。ちょろいものだ、この調子でいけば、食い扶持も安定する。

■他人様の土地に駐禁５万円の看板を

これは使える。相手は自分に分がある上、子供の不始末ときたら払わずには済まない。バカな子供ほど可愛いということか。

それから、場所を転々とし、十数件同じ手口で恐喝し続け、半年で手元に500万ほどの金が残った。『ブロークンウィンドウ理論』恐るべし。

≫≫続く

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文／丸野裕行（編集長）

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