そこに１人の銀行員風のサラリーマン。こっちを見ている。傍には現行のカローラ。

「なんや、ここに入れたいんかい？　ここは私有地や」

「ふ～ん」

「なんや、話聞いとんのかい！」

「そうでっか。で、ここは誰の所有地ですか？」

「は、関係ないやろ。シッシッ！　あっちゃいけ！」

なんや、こいつ嫌な感じや。嫌な予感がするような、しないような……。

【堺市東区日置荘北町　２SDKテラスハウス　室内新築物件のような賃貸物件】

「ここは所有者のバアさんに頼まれてウチが仕切ってるんやけど、久しぶりに顔出してみたらなんじゃコレ」

「は、はぁ？」

「お前か、何べん柵しても潰しくさってから！」

「いや、あのう……」

「ワシの顔知らんのか、社用車で来てるからってナメとったらあかんどぉ！」

ひゃ、ひゃあぁぁぁ～！　お助け！！　オレは一目散に逃げた。

あ、あれが憧れの経済ヤクザか。なんやわからん、迫力がある！

■廃墟に踏み込むとホームレスが

ちょっとリスクがありすぎた。とにかく、ターゲットはガキや。

誰も住めんでいない屋敷ではどうか？　室内なら待つには絶好の場所や。

昨今の廃墟ブーム。ガキがドライブコースにしている国道沿いにちょうどよい大きな家があった。

まだ窓や扉が破られた形跡はないが、ここはよく人の目に付く。

調子にのったガキなら、ちょっとばかり朽ちているだけで、破壊行為に及ぶやろう。

オレは手ごろな石をぶつけたり、ドアをこじ開けようとバールを持ち出し隙間に突っ込んだ。

ここを根城に、家を壊した連中から示談金をふんだくる。我ながらええアイデアや。

【ギイイイイイィィィィ…】

中に入ると、薄闇の中、人影が見える。

「誰や！　誰かおるんか！」

返事がない。薄汚い格好のホームレスが立っていた。

「ここは、ウチの所有しとる家や！　帰りさらせ、浮浪者が！」

「じゃ、なんで自分の家のガラス割るやつがおるか……」

「だ、黙れ！　おまえら、勝手に入ったら承知せんぞ！」

そのホームレスの背後から数人の同じホームレスが…。総勢12、3人。全員の目つきは曇り、包丁を手にしている者もいる。

【ガツン！】

後頭部に衝撃が走る。や、やめろ！　やめや！

オレは全身を走る痛みと異臭に揉みくちゃにされ、気が遠のいた。

★

全身打撲、腕が１本と足が１本折れていた。そう、病院送りにされてしまったのだ。

そしてオレはベッドの上で犯罪心理の本を読み、懲りずにまた違う手口を考えている。（完）

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文／丸野裕行（編集長）

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